「薬指と小指が動かないから、この指だけで弾く練習をしてみたんです」それは危険だから〜！！な、理由（Yさん、80代、ピアノ出張レッスン）

こんにちは(*^-^*)

東京都足立区でエレクトーン教室・ミュージックベル教室を開いております「co-nekoみゅーじっく・こねこのて音楽教室」の檜垣（ひがき）です。

先日のレッスンで、Yさんがこう言うのです。
「4と5の指（薬指と小指）が動かないから、ファソファソファソファソ…って、この2本の指だけ練習してみたんですけど…」って。

Yさんだけじゃない！みんなそう！

「そりゃ、私だって4と5の指は苦手です」
「先生も！？」

多分ですが、4と5の指が得意！という人間は珍しいと思います。
あえて「人間」と書きましたが…身体の構造上、この2本の指だけが得意！というのは考えにくいことなのです。

日常生活の中で、薬指と小指だけでやることって…ありますか？
真っ先に思い浮かぶのは「握る」という動作。
「握る」のも、薬指と小指だけの動作とは言い難いですが、薬指と小指が結構重要な役割をしてくる動作だと思います。
剣道の経験のある方はわかると思いますが、竹刀って、左手の薬指と小指で支えろって言われますよね。親指と人差し指、中指は「竹刀の舵を取る役割」だと習うはずです。
それで、雑巾を横に絞るのではなく縦に絞ることを習った方も少なくないと思います。
私が剣道をしていたのは、高校時代の2年間程度でしたが、最初に竹刀の握り方（持ち方）を習ったときにそう言われました。雑巾も、それまでは左右の手を横に並べて絞っていましたが、そこで初めて右手を上、左手を下に配置して縦に絞る方法を習いました。

そうなんです。

薬指と小指は「握る」動作はあるにしても、「1本ずつバラバラに動かす」動作って、多分ですが日常生活の中には「そんなにない動作」なのです。

いきなり4、5の指だけ練習するのは…スポーツジム通い始めの人がいきなり100kgのバーベルを上げるようなもの

先生の立場として。

楽しく鍵盤を弾いてもらうために、楽しんでいただくために「できないから頑張る！」この「頑張る」の方向性が違う方に行っちゃわないように気を掛ける、という仕事があります。

特に、年齢層が高くなれば高くなるほど、皆さん本当に勤勉でいらっしゃって。
いいことなんですよ！とっても！
でもだからこそ、「根性論」にいっちゃいがちな部分が、あります。

「Yさん、私もさ、鍵盤をそこそこの年数弾いてきているわけだけど、間違った方向性の練習をして手を痛めた経験って「これでもか」っていうぐらいあるんですよ」

大学生で習い始めたエレクトーン、結構すぐに「腱鞘炎」になりました。
それは姿勢（フォーム）が本当に悪かったから。
手首に水が溜まり、整形外科に行ったら「ガングリオン」が溜まっていると言われ、針の細い注射器で定期的に抜かれていました。抜かない方がいいという先生もいらっしゃるのですが、通っていたところの先生は「神経を圧迫することになるから抜いた方がいい」というスタンスの先生。
年中手首に包帯をぐるぐる巻きにしていたものです。

この状況を改善してくれたのは、2番目に習ったエレクトーンの先生でした。
ハンディカム（ビデオ）で私の演奏している様子を撮ってくださって、テレビに繋いで見せてくれました。
…ひどいのなんのって。
あちこちにチカラが入っていて、それはそれは「ガッチガチ」な上に、妙な姿勢で弾いていたのです。

今ではエレクトーンを弾いていて手が痛いということは無くなりましたが、あの時気づいて姿勢を直してくださった先生のおかげだったと思っています。

「先生も結構いろいろ苦労してんだね」

Yさんが手をさすりながら言いました。
その週の課題になっていたバーナムピアノテクニックの曲は、4と5が大活躍する曲でもありました。

「でもね、Yさん、この曲なんかまさにそうなんだけどさ」

一緒に楽譜を覗き込みながら、話を続けました。

「4と5の指だけの曲、じゃないでしょ？他の指と連動して練習していけばいいんですよ」

今日は弾かないけど、と、ハノンピアノの本もお見せしました。
指の練習のための本とも言われるテキスト。
その中に、4と5の指のための曲も複数曲掲載されているのですが、本当に純粋に「4と5」の指だけで弾く曲は、相当最後の方にちょこっとだけ出るのみ、なのです。

「すごく上手になっても、4と5だけで弾くことはないんですよ。」

言うなれば、スポーツジムに通いたての人が、いきなり100kgのバーベルを上げるトレーニングを始めちゃうようなもんですよ、って。
そこそこに身体ができあがってないと、そんなことできないじゃないですか…って。

きらきら星（変奏曲）は運動不足の人がいきなり100メートルダッシュするようなもんでしたね

『老後とピアノ』（稲垣えみ子著）という本があります。
先輩に教えていただいて読み始めた本なのですが、その本の中に、まさにまさに！！なページがありました。

著者の稲垣さんは、子供時代に「きらきら星変奏曲」を弾いた経験のある方。
老後の楽しみとして、再びピアノを習い始めたそうなのですが…昔弾けていたはずの「きらきら星変奏曲」を思い出しながらレッスンに持っていくところから本は始まります。

昔弾けていた方ですら、そうです。

Yさんは80歳を過ぎて、初めて鍵盤楽器を弾き始めた方。
そもそも「4と5の指をバラバラに動かす」という動作自体が、人生初と言っても過言ではないのです。

「弾いていくうちに、慣れますし。何よりも、弾いていくうちに「4と5の指だけ頑張らなきゃ」というのが、ちょっと違ってたな…って思うと思うんです」とYさんに話しました。

ピアノは、エレクトーンもそうですが、指単体で弾く楽器ではない、と、私は思っています。
指だけじゃなくて、手のひらの動かし方もそうですし、腕も、肩も、背中も、何なら身体全体の動かし方が指先に出てくるものだと思っています。

だからこそ。

もし、このブログを検索か何かで見つけて読んでくださっている「4と5の指（薬指と小指）が動かなくて困っている方」がいらっしゃいましたら。4・5の指だけ単体で動かす練習は、指とか手とか痛めちゃいかねませんから。おススメできないです。
どんな練習をしていけばいいのか、は、今習っていらっしゃる先生に聞いてみてください。
ちゃんと的確なアドバイスをくださると思います。

こねこのて音楽教室（足立区）では、4・5の指だけの練習は全力で止めます笑

経験者として。
もっと身体の構造に合った弾き方で、楽しく弾きましょうよ！って。
私はすごく苦労したし、痛い思いもめっちゃたくさんしたし。
だからこそ、そうじゃなくて！って早く言ってあげたいと思っています。

そんなYさん。
レッスンを始めて1年が経ちました。
今は「オーラ・リー」を、なんとペダルまで踏みながら演奏しています。
メトロノームを使って、テンポを保つこと、休符をしっかり休むこともできるようになってきました。
「読めないよ！」と言っていたヘ音記号、今ではスラスラ読んでいます。

何歳からでも、遅くない、です。
しっかり着実に、自分のものにしていっていただけるように、「そっち行っちゃダメ〜！」って言いながら（意外と先生の仕事って、ここ大事だと思う）できた時は200％喜んで。
これからも成長、楽しみなのです♪